獣の奏者 Ⅰ闘蛇編 Ⅱ王獣編
(上橋菜穂子/浅野隆広/講談社)
けっして人に馴れず、また馴らしてもいけない獣とともに生きる、宿命の少女・エリン。ある日、戦闘用の獣である闘蛇が何頭も一度に死に、その責任を問われた母は処刑されてしまう。孤児となったエリンは蜂飼いのジョウンに助けられて暮らすうちに、山中で天を翔ける王獣と出合う。その姿に魅了され、王獣の医術師になろうと決心するエリンだったが、そのことが、やがて、王国の運命を左右する立場にエリンを立たせることに……(Ⅰ闘蛇編より)。
ヒロイックファンタジーなので記事を書くか迷ったが、どうしてもこの本の感想を吐き出さないと次へ進めない。文字のチカラって凄いと感嘆。たまたま深夜にアニメを目にして興味を持って手に取った本だけれど、アニメでは単純化されていた部分を文字で読むと、物語の奥行きとなって広いファンタジー世界を作り出していた。文字でしか表現できない世界を久々に味わった感覚。闘蛇編に比べて王獣編はややバランスが悪いので、文庫落ちしてから読むと価格的にはちょうど良いのかも。
上橋菜穂子さんは、個人的に積読リストNO1の著者さんなのだが、今回の読破のきっかけが深夜のアニメだなんて想像もしない展開(しかも某国営)。ざっくり感想を言えば、ファンタジーとしてはあと一歩だが、著者はとても実力のある文章を書く人だということがわかった。新しい世界、魅力的な主人公、見たこともない獣はファンタジー好きの心をくすぐる。しかも、紡ぐ言葉にチカラがあるので著者の世界観に引きずり込まれてしまう。これで構成が上手ければどれだけのファンタジーを読ませてくれるのか、とても気になるところなのだ。
読後の第一波は「言葉のチカラ」に圧倒されたものの、第二波は少し落ち着いて「構成の粗さ」が気になってきた。闘蛇編は主人公・エリンに訪れる別れと新たな邂逅が描かれているが、王獣編はエリンの秘密が明らかになっていく。せっかくの2巻立てなのに、闘蛇編から王獣編への物語のうねりのようなものが見あたらず、単純にエリン成長物語とも読める設定に首を傾げてしまった。幾つもの伏線が大流に合流していく感覚が乏しくて、読んでいて本当に残念だった。特に、王獣編はラストのラストで「え?」と思うくらい少ないページで物語を終わらせた感覚が強く、前半を書き込みすぎだったんじゃないかと思わせるバランスの悪さを感じた。
つまり、この本の担当の編集者が悪かったのだろう(と思う)。王獣編の前半に頻繁に出てきたエサル師は重要な役どころでありながら、後半は人質という言葉でしか語られない。学友達もしかり。著者のイマジネーションは溢れんばかりなのに、十分に読ませる構成を指摘できなかった編集者の失当としか言いようがない。ただ、青い鳥文庫からも最近出版されているようなので、こちらは子ども向けに少し改編されているかもしれない。ちょっと期待。
400ページ超の単行本って重い…
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