駆け引きはキスのあとで
(今泉まさ子/タクミユウ/アルルノベルズ)
端整な美貌の弁護士・宝生漣は仕事で訪れたホストクラブで、オーナーの王嶋と出会った。他者を圧倒する傲慢なまでの存在感に、初めこそよい印象を抱かなかった漣だが、その手腕を王嶋に買われ顧問契約を交わすことに。嘘とも真ともつかない甘い言葉を囁きながら何かと漣に構う王嶋。その戯れるように触れてくる指先にもいつのまにか漣は慣れていき―。しかし些細な行き違いから、王嶋に餓えた獣のように唇を奪われ、押し倒されてしまい。
読んでみたい本リストに入れたはいいが、なかなか入手の機会が訪れずに1年半経過。ストーリー展開、キャラ設定のどれをとってもBLの王道というべき1冊に満足した。大衆小説としての条件が備わっているというか、登場人物の嫌な部分は隠され、程良くラブで程良く予想を裏切る展開。読んでいて安定感があり、ちょっとしたドラマを見た感覚である。こういう本は読後感が良い割に記憶に残らないが、大人が読む少女小説のようなところがあるので、普通のBLが読みたい方にオススメ。
表向きはホストクラブオーナー×弁護士という設定だが、どちらかというと主人公・漣の過去に関わる話なので構成がちょっとおもしろい作りになっている。漣と王嶋の恋話として、現実の時間はどんどん進むのだが、ストーリー構成では過去に時間が巻き戻されていくのだ。なので、恋は進むが、登場人物はどんどん過去の人物が絡んでくる。この辺り、上手いなあ、と思わずにはいられない。最終的には過去と決別し、新たな始まりを示唆する出来事もあったりして、一種、ホスト卒業物語を読んでいる感覚に陥る。
残念だったのはイラストくらいだろうか。現在も悪くはないが、もう少しキラキラしい絵が得意なイラストレータさんで読んでみたかった。何しろホストなのだ。昔、リーフノベルズで「愛をください」(ふゆの仁子)というシリーズがあったが、自分の中ではあれ以上のホスト物がないので基準はその辺りにある。イラストも水木かおるさんで美麗だったのだ。やっぱりホスト物はイラストが大事。ドリームイメージのきっかけになるからね。
ところで、今泉まさ子さんという作家さんは、昔からBLを書いている割に作品数の少ない作家さんの一人だ。検索を掛けてもこの10年で15冊程度しか出版されていない。好みど真ん中のBLを書いてくれるわけではないが、何となく購入してしまう作家さんなので、意外に筆致が好みなのかもしれない。というか、寝る前に読む本としては、大きく感情が揺れないけれど「楽しかった!」と入眠できる本が良い。そういう意味では安心できる。ちょっと自分的ブームが来そうなので、近刊を購入することに決定。
見開きイラストがよくカバーに挟み込まれてるのは書店員が見たくないから…?
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