愛をください
(ふゆの仁子/水木かおる/リーフノベルズ)
画材店に勤める水島佳樹は、妙な客の噂を聞く。「連日、閉店間際の店に駆け込んできては、水島の描いた画材説明用の見本画と同じ画材を買っていく」というのだ。その容貌は、水島が毎朝コーヒースタンドで見かける男の形容と一致するものだった。ある晩、水島が大学の時の仲間とバーで飲んでいると、コーヒースタンドで見かける男が近づいてきて…。「―あんた、一体何者なんだ?」「ただの銀座のホストですよ」ゴージャスな外見とは裏腹の縋るような視線に、水島は彼を邪険にできなくて―。
シリーズ再購入、再読。
どうしても手放せないBLがある。手放しても再読したくなって、数年後に再購入して再読するBLがある。これはそんな1冊。オーソドックスなBLの型に、ふゆの仁子さんの筆が物語を紡いでいく様子は、あたかも本書の主人公が水彩画を描くようである。水木かおるさんのイラストも相俟って、大人のBLという感じ。主人公の水島にイラッときても、その心の漣は必要だったと思ってしまうのが凄い。静かで純粋なラブストーリーを読みたいときにオススメの1冊。
シリーズは、本書「愛をください」続編の「愛をあげるよ」、番外編の「愛をもらって」の3冊。本書で水島をゲットした冴木が、続編では互いに嫉妬や葛藤を乗り越えて未来への夢を描けるようになる過程を描いている。番外編は続編で水島にちょっかいを出して、冴木に銀座から放逐された冴木の後輩の後日談(恋話)。番外編にちらっと出てくる冴木と水島の様子が本当にしあわせそうで、その印象がこの本を手放せない原因なのかも。
朝のコーヒースタンド。画材店に勤める水島の耳に入る噂。大学の友人との飲み会での出来事。小さな日常が大きなうねりになって、水島と冴木を近づけていく。この辺の構成は見事としかいいようがない。ふゆの仁子さんならではの流れるような筆致である。冴木が水島と会うのはホストの仕事がオフの時なので、冴木の仕事をなかなか垣間見ることはできない。けれど、そこを描かないことで、水島に対する綺麗な恋情を冴木が大事にしているようにも読めて、少し切ない。水島目線で描く筆者の手法にヤラレたと思いつつも、冴木の孤独を水島が包み込めるくらいになってくれれば、と願うばかりである。喧嘩をしたり、愛情を確かめ合ったりしながら、幸せに生きていって欲しい。何度読んでもそう思う。
リーフノベルズが無くなった現在では、今後入手困難になるだろうから、手元に保存しておくことにした。そう思って、手元に残したラキアノベルズやビーボーイノベルズやピアスノベルズ。リーフは無かったのが、今回初殿堂入り(笑)いつか書き下ろしを加えて文庫で出たらいいな、と思いつつ、BLなので気長に待つより無いか。
ある意味、命がけの恋。
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